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神戸地方裁判所 平成8年(ワ)471号 判決 1999年9月29日

原告

藤田和子

被告

澤田楠生

主文

一  被告は、原告に対し、金六四四万六六〇二円及びこれに対する平成五年一〇月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の、その余を被告の、各負担とする。

四  この判決は第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告の請求

被告は、原告に対し、金一一三六万五四五四円及びこれに対する平成五年一〇月九日より支払い済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、後記交通事故(以下「本件事故」という。)によって、傷害を受けた原告が、被告に対し、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条に基づき、損害の賠償を求めた事案である。

なお、附帯請求は本件事故発生の日から支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金である。

二  前提となる事実(争いがない。)

1  本件事故の発生

(一) 発生日時 平成五年一〇月九日午前九時ころ

(二) 発生場所 兵庫県三木市細川町増田一六七番地先県道楠原三木線

(三)争いのない範囲での事故態様

(1) 被告は、普通乗用自動車(なにわ五五え一三一一。以下「被告車両」という。)を運転して、事故現場であるカーブ(以下「本件カーブ」という。被告から見て左にカーブしている。)に進入しようとしたとき、折から反対方向から進行してくる原告運転の普通乗用自動車(神戸七七そ四〇六〇。以下「原告車両」という。)を発見して、急制動の措置をとったが、ハンドルがロックしたため、道路中央を越えて、被告車両の右前角が原告車両の右側前部(右前輪付近)に衝突した。

(2) 本件事故現場は、制限時速二〇キロメートルの速度規制がなされている道路であり、道路幅員は約四メートルでセンターラインはないが、対向車がすれ違うことは可能である。

2  責任原因

被告は、その運転車両を所有し、自己のために運行の用に供していた(個人タクシー営業)から、自賠法三条に基づき、原告に生じた損害を賠償する責任がある。

3  原告の受けた治療

(一) 事故当日である平成五年一〇月九日から平成六年六月二三日まで、飛田整形外科に通院して理学療法による治療を受けた(実通院日数一〇八日)。

(二) 平成六年五月三〇日から平成七年九月一八日まで須磨赤十字病院に通院して治療を受けた(実通院日数二四〇日)。

(三) 神戸リハビリテーション病院に通院してMRI検査を受けた(実通院日数三日)。

(四) 平成七年九月一八日に症状固定の診断を受けた。

4  損害填補

原告は、被告から、交通費名目で金一一万四四五〇円の支払いを受けた。

三  争点

1  本件事故の態様、原被告双方の過失の有無・程度、過失相殺の要否

2  原告に生じた傷害

3  原告に生じた後遺障害

4  原告に生じた損害額

四  当事者の主張

1  本件事故の態様等について

(一) 原告

(1) 被告車両は、本件カーブにさしかかる直前まで、かなりの高速度で走行していた。

(2) これに対し、原告車両は、制限速度である時速二〇キロメートルにまで減速し、道路左側を守って走行していたから、原告に過失はない。

(3) 以上から、本件事故は被告の一方的過失によって生じたものであるということができ、過失相殺はするべきでない。

(4) なお、本件事故によって原告に加わった衝撃は極めて大きなものであった。

(二) 被告

(1) 被告車両の速度は、時速四〇キロメートル程度であって、かなりの高速度で走行していた訳ではない。

(2) 本件のようなカーブのある道路においては、対向車両とのすれ違いが直線道路と比べて容易ではなく、左側部分通行車両といえども、対向車の進行に対する相当の注意が要求されるところ、原告は被告車両を発見して、一四・二メートルも進行した後に急制動の措置をとったものであり、原告には対向車に対する相当の注意を払わなかった過失がある。

(3) したがって、本件事故は、被告の一方的な過失によるものではなく、原告の過失割合は五〇パーセントを下らない。

(4) なお、本件事故における衝突の衝撃の程度は、極めて軽いものであった。

2  原告に生じた傷害について

(一) 原告

原告は、本件事故のため、腰部打撲・捻挫、外傷性頸椎椎間板症、左肩腱板断裂の傷害を負った。

(二) 被告

(1) 腰部打撲・捻挫については、このような傷害が生じているか、医学的に疑問があり、否認する。

(2) 外傷性頸椎椎間板症は、本件事故によって生じたものではない。

仮に、頸椎椎間板症と本件事故との間に因果関係が認められたとしても、原告は、加齢現象としての第五第六頸椎間の椎体の後縁の骨棘、及び先天的な脊柱管狭窄という、事故と無関係な身体的素因を有したのであり、かかる素因は軽度の外傷でも頸椎椎間板症を発生させるものであったから、民法七二二条を類推して、損害の三〇パーセントを減額すべきである。

(3) 左肩腱板断裂は、本件事故によって生じたものではない。

3  原告に生じた後遺障害について

(一) 原告

本件事故によって、原告には、頸椎部運動制限、左肩関節運動制限、疼痛等の後遺障害が残っており、これは、自賠法施行令別表(以下「自賠法別表」という。)の一二級に該当する。

(二) 被告

原告に、本件事故に起因する後遺障害は存在しない。原告は、本件事故後に器具を購入して自己流の治療を施しており、右治療が誘因となって原告主張の症状が発生した可能性も十分認められる。

4  原告に生じた損害額について

(一) 原告

(1) 通院交通費 合計三二万四六六〇円

<1> 飛田整形外科

(片道四四〇円、実通院日数一〇八日)

440×2×108=95,040

<2> 須磨赤十字病院

(片道四七〇円、実通院日数二四〇日)

470×2×240=225,600

<3> 神戸リハビリテーション病院

(片道六七〇円、実通院日数三日)

670×2×3=4,020

(2) 休業損害 三一〇万〇〇〇〇円

原告は高校職員であった夫と二人暮らしで、家事一切を切り盛りしていた。本件事故のため家事ができなくなり、少しずつできるようになったのは、須磨赤十字病院での治療を始めてからであった。

事故時の年齢五八歳と同年令の女子の平均給与年額三一九万六三〇〇円を基礎に、症状固定日までの七〇八日間分として金三一〇万円を請求する。

(3) 逸失利益 三五五万五二四四円

右平均給与年額を基礎に、自賠法別表一二級の労働能力喪失率は一四パーセント、就労可能年数一〇年に対応する新ホフマン係数は七・九四五である。

3,196,300×0.14×7.945=3,555,244

(4) 慰謝料 三五〇万〇〇〇〇円

(5) 弁護士費用 一〇〇万〇〇〇〇円

(二) 被告

(1) 通院交通費及び休業損害は知らない。

(2) 逸失利益及び慰謝料は否認する。

(3) 弁護士費用は知らない。

第三争点に対する判断

一  争点1(本件事故の態様等)について

1  事故態様

前記前提事実及び乙一、二九の1ないし4、三〇の1ないし3、検乙一、二によると、次の事実が認められる。

本件事故現場は、アスファルト舗装された平坦な道路であるが、幅員が約四メートルしかなく、道路沿いに建物があってきわめて見通しが悪いカーブであって、時速二〇キロメートルに速度規制されている。

被告は、このカーブに進入しようとしたとき、対向してくる原告車両を発見して急制動の措置をとったが、ハンドルがロックして本件カーブを曲がり切れずに、道路中央を越えて、道路端に停止寸前の原告車両に被告車両の右前角が衝突した。

被告車両の後輪のスリップ痕は、左が八・〇メートル、右が八・四メートルであった。原告車両のスリップ痕は一・五メートルで、道路左端の外側線上に残されていた。

原告車両、被告車両とも車幅は一・六九メートルで、慎重に運転すれば、すれ違うことは可能であった。

事故当時、天候は晴れで、路面は乾燥していた。

2  双方の車両の速度

車両の制動初速度が、

制動初速度(km/h)=(259×制動痕の長さ(m)×摩擦係数)の平方根

との数式で求められること、アスファルト舗装における摩擦係数は〇・七程度であることは、当裁判所に顕著である。

これを前記認定の被告車両のスリップ痕に当てはめれば、被告車両の制動初速度は、時速約三九キロメートルであったことになり、被告本人の時速約四〇キロメートルで走行していたとの供述とほぼ合致する。

他方、これを前記認定の原告車両のスリップ痕に当てはめると、原告車両の制動初速度は時速約一六・五キロメートルであったことになり、原告本人が供述している時速約二〇キロメートルとほぼ合致する。

以上から、被告車両の速度は時速約四〇キロメートルであり、原告車両の速度は時速約二〇キロメートルであったと認められる。

3  以上の事実からすれば、被告には、制限時速二〇キロメートルに速度規制された、見通しの悪いカーブに進入するに際して、適宜減速して適切なハンドル操作を行い、道路中央を越えないように走行する注意義務があるのに、これを怠って、漫然時速約四〇キロメートルで進行した過失により、原告車両を発見して急制動の措置を要する事態を招き、その結果ハンドルがロックして道路中央を越えて対向車両に衝突してしまったのであり、その過失の程度は大きい。

これに対して、原告は、制限速度に従い、かつ道路左端を走行していたのであって、過失は認められない。被告は、前記乙一(実況見分調書)には、原告が被告車両発見後制動開始までに一四・二メートル走行した旨記載されていることを指摘するが、自動車運転者には、対向車両を発見しても、それが道路に沿って進行せずに対向車線を塞ぐように直進して来ることまでも予測して、自車を停止させる義務があるとは言えないから、原告の制動開始までに若干の遅れがあったとしても、過失相殺するのは相当ではない。

4  なお、原告は、事故による衝撃の程度が極めて大きかった旨主張し、原告本人もこれに沿う供述をする。

しかしながら、前記の前提事実並びに乙一、二九の1ないし4、三〇の1ないし3、原告本人、被告本人及び弁論の全趣旨によれば、原告車両、被告車両とも、確かに破損はしたものの、その破損は部分的な損傷に止まっていてさほど大きいものではないこと、事故当時シートベルトを着用していなかった被告が負傷しなかったこと、原告車両の助手席に同乗していた原告の夫も特に負傷しなかったことが認められ、右からすれば、本件事故時に原告車両に加わった衝撃が極めて大きいものであったとまでは認められない。

二  争点2(原告に生じた傷害)について

1  腰部打撲・捻挫について

甲二、乙二、三、九、原告本人によれば、原告は、本件事故によって腰部打撲・捻挫の傷害を負ったと認められる。

2  外傷性頸椎椎間板症について

甲二、三、乙三、三四、三六、証人麻田毅彦(須磨赤十字病院における担当医師。以下「麻田証言」という。)、原告本人、鑑定の結果によれば、本件事故によって、原告が外傷性頸椎椎間板症の傷害を負ったことが認められる。

他方、乙三四、麻田証言によれば、原告の第五/六頸椎間の椎体の後縁に骨棘があること、その骨棘が加齢的変化によって生じたものであること、同部位の脊柱管の幅が一〇ミリメートルしかなく通常より狭いこと、脊柱管の狭窄が先天性のものであること、椎体の後縁に骨棘が出ていて脊柱管が狭い場合には、通常の場合よりも骨棘による脊髄の圧迫症が生じやすいことが認められる。

以上の事実からすれば、加齢的変化による骨棘及び先天的な脊柱管の狭窄という、原告自身の身体的素因が外傷性頸椎椎間板症の一要因となったことが推認できる。

3  左肩腱板断裂について

原告は、飛田整形外科において、頸椎挫傷、腰椎挫傷の診断を受けて平成五年一〇月九日から翌六年六月二三日まで通院し(実日数一〇八日)、頸部・腰部の牽引、温熱パック、電気療法等の理学療法を受けていたが、経過が思わしくないとして、同年五月三〇日に須磨赤十字病院を受診し、外傷性頸椎椎間板症、胸部打撲、腰部打撲との診断を受け、同病院麻田医師の指示で神戸リハビリテーション病院で頸部及び腰部の各MRI検査を受けたうえ、同年六月一三日から須磨赤十字病院で治療を受けていた。同年七月四日になって原告が左肩の痛みを訴えたことから、同月七日関節造影検査をしたところ、左肩腱板に小さな断裂があることが認められ、同日、麻田医師は、本件事故による症状として「左腱板断裂」の傷病名を加えた。原告本人は、左肩には事故前は異常はなく、事故直後から痛かったが、頸部の異常から生じているものと考えていたため、特に訴えなかったとの趣旨を同医師に述べていた。(乙三、乙二三、麻田証言、原告本人)

しかし、右のとおり本件事故の約九か月後に初めて左肩痛を訴えるまで、原告の左肩腱板断裂が発生していたことを裏付ける客観的所見はない。飛田整形外科での初診時、右肩については、関節部の三角筋部の圧痛と自動挙上可能との記録があるが、左肩については、圧痛、自発痛、運動制限等の記録はなく、異常はなかったものと認められる。また五か月半後の平成六年三月二五日の時点では、左肩に運動制限が存在する旨の記録があるが、年齢(当時五九歳)相応の加齢現象(五十肩)と診断され、本件事故による傷害とはとらえられていない(乙二、三六)。しかも須磨赤十字病院に転院した経過からして、改めて詳しく自覚症状を問われたうえで、MRI検査を二度受けたはずであるのに、七月四日まで、やはり左肩部の圧痛、自発痛、運動制限等は記録されていない(乙三)。原告は外傷として最も多い棘上筋は正常であって、上腕二頭筋短頭の断裂である(乙三四)。

また、腱板断裂は、加齢や労働によって腱板が脆弱化している場合、明らかな外傷歴のない場合でも、突然、特に原因もなく、活発な動作をしたことにより発生することがあるものである(乙三四、三七)。なお、原告本人は、須磨赤十字病院に通い出して痛みが少し治まったころ、夫に、滑車にロープを通して、左右両手で交互に引っ張って、手を挙げる訓練をするための道具を作って貰った、と述べており、活発な運動をしていた疑いもある。

以上からして、原告の左肩腱板断裂は、平成六年七月四日の直前ころ発生したものと解するのが相当であって、本件事故によって生じたものとは認められない。

もっとも、左肩腱板断裂による症状は、本件事故と相当因果関係の認められる頸部椎間板症等の症状と併存して、治療も同時に行われているから、原告が本件事故によって被った損害のうち通院治療やそれに関連して生じた損害については、結局割合的に認定するほかないが、左肩腱板断裂が発症したのちの通院頻度やその改善状態から見て、左肩腱板断裂は、以後の損害に、五〇パーセント寄与しているものと見るのが相当である。

4  原告の身体的素因による減責

また、頸部椎間板症については、骨棘や脊柱管の狭窄という、原告自身の身体的素因が症状の発生に寄与していると認められ、このような場合には、いわゆる割合的因果関係があるものとして、民法七二二条の過失相殺の規定を類推適用するのが相当であり、その割合を一〇パーセントと見て、左肩腱板断裂による損害を除いた残りの原告の損害の九〇パーセントを本件事故に基づく損害として被告に負担させるのが相当である。

三  争点3(原告に生じた後遺障害)について

甲二、乙二二、原告本人によれば、原告は、平成七年九月一八日に須磨赤十字病院において症状固定の診断を受けたこと、自覚症状としては、頸部痛、腰痛、頸椎回旋の際の悪心があり、両手指の知覚鈍麻が残存しており、頸椎の運動制限、左僧帽筋の圧痛があり、頸椎部の運動制限などの症状が残っていることが認められ、右症状は、自賠法別表一四級一〇号に該当するものと解するのが相当である。このほか、左肩痛、左肩関節の可動域制限(結帯動作不可)があるが、左肩腱板断裂によるものと解され、本件事故と因果関係のある後遺障害とはいえない。

四  争点4(原告に生じた損害額)について

1  通院交通費

(一) 甲三によれば、通院交通費として、原告の自宅から、飛田整形外科まで片道四四〇円、須磨赤十字病院まで片道四七〇円、神戸リハビリテーション病院まで片道六七〇円が必要であると認められ、実通院日数については当事者間に争いがない。そして平成六年七月四日より前の、須磨赤十字病院への通院日数は六日、神戸リハビリテーション病院への通院日数は二日である(乙三)。

(二) 右によると、平成六年七月四日以前の通院費については全額が、それ以降の通院費については、その半額が、本件事故と相当因果関係がある損害と認められる。

そうすると、本件事故と相当因果関係のある交通費は、次のとおり二一万三三四〇円となる。

440×2×108=95,040

470×2×(6+234÷2)=115,620

670×2×(2÷2+1)=2,680

2  休業損害

(一) 原告本人、弁論の全趣旨によれば、本件事故当時、原告は高校職員の夫と二人暮らしで、主婦として家事一切を担当していたこと、及び本件事故後は、掃除、洗濯、買い物などの日常の家事ができなくなったこと、その症状は徐々に軽快してきて、須磨赤十字病院での治療を始めたのちは、家事を少しはできるようになったこと、平成七年九月一八日に症状固定診断を受けたあとは、変化がなく、腕を挙げることができず、左手で物を握れないため、料理も不自由であることが認められる。

(二) そこで、本件事故当時の原告の年齢である五八歳の女性の平成五年度の平均賃金年額三一九万六三〇〇円を基礎に、本件事故による休業損害としては、左肩腱板断裂が発生した平成六年七月三日までの二六八日については八〇パーセント、その後症状固定までの四四二日間については、六〇パーセント(次第に軽快していた。)の二分の一である三〇パーセントと見るのが相当である。

そうすると、次のとおり、本件事故と相当因果関係のある休業損害は三〇三万八六七四円となる。

3,196,300÷365×(0.8×268+0.3×442)=3,038,674

3  逸失利益

(一) 原告の本件事故による後遺障害は、前記の通り自賠法別表一四級一〇号に該当するものであり、その労働能力喪失率は五パーセントとするのが相当である。

(二) そこで、原告の症状固定時の年齢である六〇歳の女性の平成七年度の平均賃金年額二九六万六九〇〇円を基礎に、労働能力喪失率五パーセント、労働能力喪失の期間を七年間とし、対応する新ホフマン係数五・八七四を乗じると、後遺障害による逸失利益として賠償を求めうるのは八七万一三七八円となる。

2,966,900×0.05×5.874=871,378

4  慰謝料

原告の通院や後遺障害など、本件に現れた一切の事情を考慮すると慰謝料としては二五〇万円が相当である。

5  原告の身体的素因による減責

以上の損害小計は六六二万三三九二円であるところ、前記のとおり、原告に生じた損害には、原告の身体的素因である、骨棘、脊柱管狭窄、腱板の脆弱化も寄与しているものと認められ、右損害のうち九割の限度で被告に負担させるべきであるから、被告が負担すべき損害額は五九六万一〇五二円となる。

6  損害の填補

既払い金額は一一万四四五〇円であるからこれを控除すると、五八四万六六〇二円となる。

7  弁護士費用

原告が本訴訟の提起遂行を原告代理人弁護士に委任したことは当裁判所に顕著であり、本件事案の内容、訴訟の審理経過、右認容額等一切の事情を勘案すると、被告が負担すべき弁護士費用を六〇万円とするのが相当である。

8  まとめ

そうすると、原告が被告に本件事故により被った損害の賠償として求めることができるのは、六四四万六六〇二円となる。

第四結論

よって、原告の請求は、主文第一項の限度で理由があるからこの範囲で認容し、その余は理由がないものとして棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条、六四条本文を、仮執行宣言につき同法二五九条一項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 下司正明)

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